浦島太郎に出てくるウミガメ・・・
ウミガメが好きすぎて活動を続けることおよそ10年・・・
気づいたらウミガメの論文まで書いてしまったお魚研究生が
浦島太郎に出てくるウミガメの種類についてご紹介します!
「浦島太郎を生物の観点から考察してみた!」
皆さん一度は聞いたことがある昔話「浦島太郎」。
諸説ありますが、まず初めに簡単にあらすじを紹介します。
ある日浦島太郎が、浜辺を歩いていると、砂浜でいじめられてる子ガメを見つけます。その子ガメ助けたところ、しばらくして、そのカメが大人になって現れ、昔のお礼に竜宮城に連れて行ってもらいます。竜宮城に行くと、美しい乙姫さまに歓迎され、素敵なご馳走でもてなされ、楽しい毎日を過ごします。しかし、故郷のお母さんのことが気になった浦島太郎は、竜宮城から帰ります。そのときにもらった玉手箱を開けると、中から白い煙がもくもくと出て、たちまち太郎は白いひげのお爺さんになってしまった。
というお話です。
ここでウミガメの観点から気になるポイントがいくつかでてきます。
① 浦島太郎が助けたウミガメの種類って?
② 子ガメって何年で大人になるの?
③ この広い海で、昔いた砂浜に戻ってこれるの?
これらについて、ウミガメの生態や生活史を踏まえて、考察していきます。
① 浦島太郎が助けたウミガメの種類って?
皆さんは世界にウミガメが何種類いるかご存知ですか?
実はウミガメは世界に7種類or8種類いるとされています(クロウミガメを1種とするかの違い)。
さて、ここで昔話を振り返りましょう。
浦島太郎が助けたのは子ガメなので、日本の砂浜に産卵する種類ということになります。
先程の7or8種類うち日本近海に訪れるのは5種類。さらに日本に産卵しにくるのは、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの3種類です。
よって、浦島太郎が助けたウミガメがこの3種類のどれかということになります。
次に浦島太郎が子ガメを助けた場所について見ていきましょう。
浦島太郎伝説があるのは、全国40ヶ所にものぼりますが、中でも知られているのが、「京都府の伊根」、「香川県の三豊」、「神奈川県の横浜」、「鹿児島県の開聞岳」などです。
いずれにしても本州(西日本が多い)であることから、本州に産卵に訪れる種類ということになります。
各種の産卵地を見てみると、アカウミガメは本州の東北以南の太平洋側、アオウミガメは小笠原諸島および南西諸島、タイマイは奄美諸島以南の南西諸島が産卵地となっています。
したがって、浦島太郎が助けたウミガメは、アカウミガメである可能性が高いと言えます。
さらに、ウミガメは一度海に出ると、産卵のとき以外は上陸しないことから、浦島太郎を竜宮城に連れて行ったのはメスであると考えられます。
②子ガメって何年で大人になるの?
まず、ウミガメの生活史を大まかに説明します。成熟した雌雄のウミガメは交尾をし、雌ウミガメが砂浜に産卵しに上陸します。約2ヶ月で孵化すると、子ガメは海に向かい、沖を目指します。
その子ガメは20-30年かけて成熟し、繁殖するというサイクルを送ります。
昔話には、子ガメを助けてから再びカメが訪れるまで、「数年」とあったり、「しばらくして」とあったりと様々です。
この生活史を踏まえると、同じカメに恩返ししてもらうには、最低でも20年程度を要していると考えられます。
当時浦島太郎が子供だったとしても、いい大人になってますね。
③ この広い海で、昔いた砂浜に戻ってこれるの?
一度大海原に出たウミガメが、また同じ砂浜に戻ってくるなんてできるのでしょうか?
実はウミガメは、母浜回帰という生まれた砂浜で産卵するという習性を持つことが知られています。
なぜこのような習性を持つのか、どうやって生まれた砂浜を認識しているかなどは、未知な部分も多いです。一説によると、生まれて海に出る際に、砂浜の匂いを認識したり、地磁気で場所を認識したりしているのではと言われています。
浦島太郎に出てくるウミガメもこのような習性を利用し、浦島太郎に恩返しをしにきたのかもしれませんね。
終わりに
というわけで、今回は昔話の『浦島太郎』を、生物学の観点から考察してみました。
とはいえ、昔話なので様々な説があったり、解釈があったりします。
今回の話はあくまでもその解釈の一例とお考えくだされば幸いです。
また、ウミガメの生態は未知の部分が多く、年齢の識別方法や寿命などもわかっていません。
ぜひこれを機に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
何度もお世話になった小笠原海洋センターです。
ウミガメに興味をもって下さった方は是非見ていってください!
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