「紫外線殺菌装置ってなんなの」「本当に効果があるの?」
海水で生き物を扱う様々な現場で活躍する紫外線殺菌装置の役割と
その効果について現役のエンジニアが解説していきます。
前半は分かりやすく、後半に少し専門的な話を載せるようにしています!
紫外線殺菌装置って最近耳にするけど、どんな効果があるのかなぁ。
僕たちの水槽でも使われていたりするのかな。
紫外線殺菌装置は水をきれいに維持する。
有機物の分解
紫外線には有機物を分解する効果があります。生き物たちのフンや、食べ残した餌などを分解することで海水をきれいに保つことが出来ます。
海水も生ものです。何もせずに放っておいたら腐ってしまいます。腐敗の原因となるバクテリアなどを殺菌することで水を長持ちさせることが出来ます。
微細藻類の除去
紫外線殺菌装置は微細藻類の発生を抑えます。アクアリウムに挑戦したことのある方で、経験があると思うのですが藍藻類(シアノバクテリア)や茶色いコケに悩まされたことはありませんか。
これらの原因となる微細藻類や胞子類は海水中を漂っています。そのため紫外線殺菌装置が効果的にはたらき、発生や繁茂を抑えることが出来るのです。
一つ一つは小さく、肉眼では確認できないサイズなので気づかないかもしれません。
紫外線殺菌装置には水をきれいにする効果があるんだね。
最初はよく分からなかったけど、なんだか良さそうな気がしてきたよ。
紫外線殺菌装置は病気を防ぐ
紫外線殺菌装置は病気を防ぐ
紫外線殺菌装置は、魚の病気の原因となる細菌類やウイルスを不活化し病気の広がりを抑える効果があります。
水槽の中はとても病気が広がりやすい環境になっており魚の病気は他の動物と比較しても急速に広がってしまいます(同じ部屋で生活をする人が病気になったらすぐ移ってしまいますよね)。
天然の海水には様々な細菌類やウイルスが含まれるほか、一見すると清潔に感じる水道水にもビブリオ菌などが含まれているため、一度殺菌処理を施してから飼育することが望ましいです。
紫外線殺菌装置の利点
飼育している生き物に影響を与えることなく、海水の殺菌処理を行うことが出来ます。
塩素やオゾンを用いた殺菌の場合、残存した物質が、飼育している生物に影響を与えることなく殺菌処理を行うことが出来ます。
また、オゾンや塩素の発生装置と比較すると比較的安価であることも特徴です。
殺菌能力 | 価格 | 生き物に使える | |
紫外線殺菌 | ○ | 安い | ○ |
塩素殺菌 | ○ | 高い | × |
オゾン殺菌 | ○ | もっと高い | × |
紫外線殺菌装置のデメリット
紫外線殺菌装置を入れることによるデメリットはほとんどありません。多少のコストがかかることや、水の流れが制限されてしまうこと以外は設備上のデメリットは特にないと言われています。
ただし、苦手なことがあります。紫外線殺菌装置は浮遊している物質に対してのみ殺菌効果を発揮します。また、水が濁っていると殺菌性能を十分に発揮することが出来なくなってしまいます。
水槽の中は、病気がとても広がりやすいから安心だな。
僕たちは、ヒトデしか食べないんだけど、水をきれいにしてくれて助かってるよ。
様々な場所で活躍する殺菌装置
紫外線殺菌装置は他にはどんな場所で使われているんだろう。
そういえば、私たちがいる水族館で見かけたことがあるかしらね。
水族館
水族館では、海からくみ上げた海水を利用することや、循環により海水を再利用しています。その際、紫外線殺菌装置で海水の殺菌を行います。
カキ浄化・海ぶどう浄化設備
カキは海水中の浮遊物質を主な食事としています。人間にとって有害な物質を含んでいることがあります。そのため、綺麗な海水に一定期間漬けることで、カキを浄化するのです。その時に使う海水を綺麗にする役割が
また、海ぶどうのように生で食べる海藻の表面にはたくさんの細菌がついているので、浄化することで私たちの食卓に並ぶことができるのです。
漁港
陸上養殖設備
近年陸上養殖がブームになっているのをご存じでしょうか?このような施設では、限られた水資源を有効活用するため循環型の施設となっています。水をきれいにするために紫外線殺菌装置が大活躍しています。
こんなにたくさんの場所で活躍しているなんて知らなかったな。
今度漁港に行く機会があったら探してみよーっと。
技術的なお話技術的なお話
ここからは、少し難しそうな話になるけど
興味があるしちょっとだけ聞いてみようかな。
紫外線殺菌装置の波長は
一般的な紫外線の波長は250-270nmです。紫外線殺菌装置の効率が最もよいのが、253.7nmとされており、多くの殺菌装置はこれに近い値になるように調整されています。
もう少し専門的な話をすると、DNAの紫外線に対する吸収特性と、水銀ランプの発光特性からこの値が算出されています。
およそ400nmより短い波長のものは全て紫外線と呼ばれるのですが、殺菌装置の波長はおよそ253.7nm と思っておくといいです
材質は
家庭用のアクアリウム向けの場合、プラスチックや樹脂性が多く、水族館のような大型の施設の場合チタン製の殺菌装置が用いられることが多いです。
どちらも海水による腐食と、水圧に耐えられることが必要です。
おわりに
いっぱい勉強したらお腹がすいたなぁ
紫外線を海水に照射することで、海水中の
病気の予防や水質の安定化につながります。
水族館においては欠かせない存在となっています。
今回はぱくたそさんの画像をお借りしました!
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